真実和解委員会

年明けから忙殺されてしまい更新が滞ってしまいました。これが今年初の記事となります。遅いですがあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

金曜に仕事が一段落したのでようやく休日らしい休日となり、TSUTAYAで映画『レッド・ダスト』を借りてきて観ました。大好きなヒラリー・スワンクが主演(宣伝文によれば、インディー制作にもかかわらず脚本に感動して自ら主演させてほしいと直談判したとか)。素晴らしかったです。劇場公開されなかったのが残念ですが(劇場公開はオランダだけだったそうです)、ワールドカップで注目される南アフリカについて知る上でも貴重な作品だと思います。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト [DVD]

南アフリカの「真実和解委員会」を描いた映画。アパルトヘイトで生じた国内の深刻な対立を背景に、加害者を通常の裁判で裁いて罰するのではなく、公聴会で仔細に「真実」を明るみに出し、加害者に謝罪を求め、人々に赦しを求めることで紛争後の社会を再生していく取り組みです。デズモンド・ツツが委員長を務めました。

一般国民も参加して開かれる公聴会で、憎悪と悔恨の念が渦巻き、しばしば怒号と嘆きの声が飛び交う中で痛々しい真実が明るみに出されていく過程は壮絶ですが、また和解の実現が決して一筋縄ではいかないことが映画でも感じられましたが、「勝者による裁き」で終わらせるのでなく過去を「解放し」克服していこうとする理念と、それを受け入れていく人々の気高さに胸を打たれました。

真実和解委員会と同様の取り組みはペルー、チリ、ガーナ、モロッコ、等いくつもの国で行われたそうで、これについて論じた阿部利洋著『真実委員会という選択』(岩波書店)も読み、非常に勉強になりました。対話や和解の余地など一見なさそうな深い溝を、従来の裁きによる問題解決ではなくより未来志向の手法で乗り越えていく、この取り組みには、さまざまな溝を抱えた世界に生きる私たち一人ひとりにとって学ぶべきものが多くあるように思います。

真実委員会という選択―紛争後社会の再生のために

なお、南アフリカ民主化の過程でシナリオ・プランニングを用いて変革ファシリテーターをつとめたアダム・カヘン氏の著書"Power and Love"の邦訳を4月に英治出版から刊行します。4月12日にカヘン氏を招いたSoLジャパン主催のシンポジウムも開催されますのでご興味のある方はぜひご参加ください。