『湖のほとりで』

今週末から始まった映画『湖のほとりで』を観てきた。イタリア映画。2008年度のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリア版アカデミー賞らしい)というもので史上最多の10部門を独占した話題作だそうで、それがどのくらいすごいことなのか知らないものの、気になったので。銀座でやってます。

ある少女が湖のほとりで死体となって発見される。その謎が主人公の警部によって徐々に解き明かされていくサスペンスっぽいストーリーなのだけど一筋縄ではなく、関係者個々人や警部自身が抱えた家庭の問題や表にしづらい心理などが絡んでくる重層的な展開となっている。非常に良い映画だと思います。

イタリアの映画を私はほとんど知りませんが、イタリア映画と聞いて思い出すのは『道』。ジェルソミーナとザンパノの話。場面の絵が記憶に焼き付いて離れないのが名作の証拠か。あとサイトを見て気付いたけど『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』もイタリア映画です。

こういう「名作」を観ていて感じるのが、画面に漂う「意味ありげ」な雰囲気の濃さ。ハリウッド映画はわかりやすい。表現されていることの意味が平板。それと対局にあるような、空気の濃さがある。痛みは痛みとして在るし。風景をとっても、映された湖畔の草の匂いが漂ってくるような生々しさがある。そういうものがあるのが、良い映画に共通の特徴のように思います。

ともかく『湖のほとりで』。これから観る人がいるかもしれないのであまり具体的には書きませんが。理想の家族像、などというものでは在りえない、普通の家族関係の中に潜む一種のどうしようもなさ、業みたいなもの、いろいろなぐちゃぐちゃ、そういうものをぐっと飲み込んで前を向く、そんな良い映画であります。