一望千里

昨日今日と猛暑が続いております。今日は最高気温32度だったそうです。四谷の某社でミーティングがあったのでスーツにネクタイで行ってきましたが酷かった。普段は私服で仕事をしているので、こういうときに世のスーツ族一般の忍耐力に改めて敬服します。私も4年前はそうだったはずなんだが。

それで、暑さをしのぐにはやっぱり扇子だろう、ということで、日本将棋連盟が販売している棋士の揮ごう入り扇子を買いました。私は長年の将棋ファンです(自称2段)。渡辺明竜王や羽生名人や谷川九段など尊敬する棋士は大勢いますが、今回は応援している女流棋士矢内理絵子女王(前・名人)の扇子を購入。

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矢内女王は私と同い年ですが女流名人・女王の2冠を達成し、今や将棋界を代表する存在です。インタビュー記事や書籍などで語られている将棋観(これはそのまま人生観に通じる)にも甚く刺激を受けています。

将棋の世界は、一般の我々の世界よりもある意味でずっと厳しく、透明な世界のように感じます。勝負が明瞭につき、実力は否応なく露呈され、一手一手のなかに人間性まで曝け出されてしまう。虚飾の効かない世界。礼に始まり礼に終わる、純粋で潔い世界。わずか81の升目の中で繰り広げられる、取り返しのつかない千変万化。一局一局が奇蹟のようでもある。そこに広がる宇宙に、文字通り「我を忘れて」没入する、そういう雰囲気。将棋のそういう所に私はこの上ない魅力を感じます。

矢内女王の揮ごうは「一望千里」。千里の先まで一望する。千里の果てまで視界に収める。先の先まで見通そうとする眼、見通してしまう眼が、苦しみも生めば楽しみも生み、苦しみを無にもすれば楽しみを抑えもする。無我というものにおそらく近い、日常の地平に垂直に立ち上がる覚醒した意識。そういう意識のあり方を、姿勢を、世界と人生に対して持していたいと思うこの頃。