DSI-Talk

21日(日)、「Designing Social Innovation(DSI)」の会合に出席しました。「ソーシャルイノベーションをデザインする」をテーマに、これまでの研究活動のまとめと今後の予定について共有したあと、「DSI-Talk」と題して、一人ひとりが考える「デザイニング・ソーシャルイノベーション」について、ワールドカフェ・ダイアログを行いました。楽しかった! 毎度このメンバーには感謝です。ほんとうに良い刺激と勉強になっています。

デザイン、という言葉を調べると、「人間の行為をよりよいものにするための計画」というような定義に出くわした。いわゆるアートとしてのデザインだけでなく、空間や物事を、いかに「よりよい行為」を生むために設計するか、ということか。ソーシャルイノベーションをデザインするとは、ソーシャルイノベーションを意図的に起こす、そのための計画を立てること。

もちろん、複雑な世の中で、しかもイノベーションについて、緻密な計画を立てることなど非常に難しいでしょう。が、ある種の方向性、ベクトル、を見出し、それに沿うデザインを行うことはできるはず。そうした意味での「デザイン」は、社会の複雑性・多様性・変化のスピードが高まるなか、今後ますます重要性を増すにちがいありません。

ダイアログの中で、社会的な問題のほとんどは、ものすごく大雑把にいえば、必要な「つながり」の欠如から生じているのだという視点に思いいたりました。当たり前かもしれませんが。人がつくりだした問題があり、それは人の手によって解決可能なはずで、しかしその間のつながりはない。ニーズがあって、リソースもあるのに、つながっていない。官民の分断、非営利・営利の分断。ティーチ・フォー・アメリカは、トップレベルの学生を恵まれない子供とつなぐことで、教育機会格差を是正しています。フローレンスは、子育て経験者というリソースを、病児保育のニーズにつないで、仕事と育児の両立を支援しています。グラミンフォンは、貧しい農村に通信手段を提供することで経済・社会を抜本的に変革しています。

これまで「つながり」を欠いてきて、それが当たり前の現実としてとらえられてきたようなところに、意味のあるつながりを見出し、実際につなげていくことが、新たな社会像や、ビジネスモデルや、ソーシャルシステムを生み出していく。フランシス・フクヤマの『「大崩壊」の時代』という著書では、自然発生的、自己組織的に生み出される新たな社会秩序に目が向けられていました。さまざまな分野で問題を抱える現代日本はいま、社会関係資本の潜在力を問われているのだとも言えそうです。

ダイアログではいろんな話題が出て、各人がこの分野に関心を持つようになったきっかけから、選挙や民主主義のことまで、さまざまな話をしました。そして「ソーシャルイノベーションをデザインする」は、もしかしたら非常に小さなレベルから、たとえば日ごろ過ごしている職場や教室のレイアウトを変えるとか、つきあう友人を選ぶとか、そういう次元から起こしていけるのではないか、とも。割れ窓理論みたいなものもこの類かもしれません。マンチェスター・ビッドウェルのビル・ストリックランドは、スラム街のドロップアウト寸前の少年たちを、清潔で美しいアトリエに招き、陶器づくりを教えることで彼らの行動に変化をもたらしています。

創造的なダイアログを通じて、これから自分が取り組んでいきたいテーマについても、良い示唆と後押しを得たように思います。本業でも、本業外でも、「ソーシャルイノベーションをデザインする」に、しっかり向き合っていきたいと思います。