日本のNPOはなぜ不幸なのか?

市村浩一郎氏著『日本のNPOはなぜ不幸なのか? 「社会をよくする」が報われない構造を解く』を読みました。

日本のNPOはなぜ不幸なのか?―「社会をよくする」が報われない構造を解く

著者は衆議院議員阪神・淡路大震災復興関連NPO基金の責任者を務めるなどNPO支援に力を注いできた人で、1998年施行の特定非営利活動促進法の成立に早期から関わった人です。もっとも、著者らが1995年にNPO議員立法専門委員会として提出したNPO法案を受けて与党案として作成された現在の特定非営利活動促進法は、著者らが構想したものとはだいぶ違っており、その禍根と問題意識から本書執筆にいたったようです。

著者らが構想したNPO法案は、NPOの法人格取得手続きを定める法律のみならず、税制上の優遇措置を規定する諸税法の改正を含むもので、ひとつの体系としてのNPO法を志向したとのこと。それとは異なる現在の特定非営利活動促進法については、さまざまな問題を指摘しています。

NPO法人の活動領域を17項目に限定列挙して規定していること。NPOがカバーするべきニーズは社会状況とともに変化しうる。現行法は、あらかじめ民間非営利活動の目的・領域を限定している。運用で対処できる部分はあるが。

NPOを「不特定多数の利益」の増進を図る活動をするものとして規定されていること。特定性の高いターゲットをもつ事業はそぐわないことになってしまう。これも、運用上の柔軟性はあるものの、そもそも行政は不特定多数の利益に、企業は一定の市場規模や収益性にとらわれざるをえない以上、特定性の高い領域はむしろNPOに活動が期待されるべき。

こうした点には「公益」を行政が規定しようとする「公=官」の発想が色濃く表れていると著者は指摘しています。同様に、NPO法人格の取得が所轄庁の認証によることとなっている点も、NPOに対する行政の監督的関与に道を開いているとして問題視しています。「行政の関与は、登記または登録などが正しく行われているかという点に留まるべきなのだ。そして何か問題が発生した場合は、司法で解決を図るべきなのである」。

役員のうち報酬を受ける者は3分の1以下でないといけない、という無償労働条件、そしてもちろん、寄付税制の不備についても指摘されています。税制や資金調達についての議論は本書では詳しくはありませんが、「官の公」から「民の公」へ、という考えに立った一連の議論は興味深く、大きな課題と感じました。

「官−民」と「公−私」の軸でつくったマトリクスが載っていました。「民の私」は営利企業、「官の公」は行政、「民の公」がNPO、そして「官の私」が、官僚の天下り先となって行政と癒着している独法や公益法人など。この「官の私」の無駄を削減していくとともに、「民の公」により多くのリソースを振り向けていく必要があります。

個人的には、非営利セクターにより多くの資金をより効果的に回していく、いわゆるソーシャルファイナンスの可能性に目を向けていきたいと思っています。また、上記の法制度上の問題については、特定非営利活動促進法の改正をめざす動きが議員内で起こっているとのこと。今年12月施行の公益法人制度改革によって、財団法人・社団法人の設立、税制優遇措置を受けられる公益法人化は、だいぶハードルが下がります。特定非営利活動法人についても同様の措置が早期にとられることを願います。