ケルン・コンサート

先日三重県に行った際に泊めていただいた友人宅の母上殿が音楽好きな人で、夕食を終えて談笑の一時にキース・ジャレットの名盤「ケルン・コンサート」をかけていた。キース・ジャレットは私が最も好きなピアニスト。そして「ケルン・コンサート」はその中でも最も素晴らしいアルバムだ。母上殿は前の来日時のライブにも行ったとのことで――私は装丁界の巨匠・S氏と行こうと話していたのにチケットが取れず無念の涙を飲んだものだった――しばらくそんな話をした。

ザ・ケルン・コンサート

それで戻ってきてからときどき自宅でも会社でも「ケルン・コンサート」をかけている。すべて即興演奏のケルン・コンサートは、一度聴いたら忘れようがないフレーズで始まるパート?から、天駆けるようなパート?まで、まさに神憑りの音楽が流れていく。あまりにも美しい。美しいと言うのでは到底足りないが、ありえないほど美しい。

彼の音楽は「癒し」ではない。感じるのは「畏れ」とか、何かそういう感じ。単に「すごい」ということの比喩としてでは決してなく、キース・ジャレットの音楽には実際、何か神々しいものがある。何か天から降りてきたものがキースを通じて外に溢れ出しているような印象がある。彼は彼自身より大きなものとつながっている。そう思わずにはいられない「ケルン・コンサート」。何回聴いても飽きない。