途上国市場とクラウドソーシング

オープンイノベーションクラウドソーシング等々、組織外の「知」を取り込んで製品開発やイノベーションを生み出そうという考え方はずいぶん前から言われているようなのだけど、意外に反発や抵抗も招きやすい考え方のようだ。ということを某IT企業の人から聞いた。部外者や素人のアイディアがそんなに役に立つものか、という疑問やプロとしての心理的抵抗、また内部のノウハウの流出懸念なども生じやすいらしい。なるほど、という気はする。

そういう違和感や懸念を覚えるのは、ある意味ではまともな感覚かもしれない。一方で、彼ら自身がなじみのない市場、未経験のテーマについては、知を外部から調達するほかないだろう。それで考えられる一つのテーマが、途上国の貧困層を対象にした低価格の製品・サービスの開発だ。当たり前のことだけど、そこで求められているニーズに的確に応えるには、現地の状況、その人たちの生活環境をできる限り具体的に知る必要がある。そういう人からアイディアを得るほうが良さそうだ。クラウドソーシングはこういう所で有効かもしれない。

ミネラルウォーターをボトルでなく小分けのビニール袋詰めで販売するとか、電気が引かれていないから携帯電話の活用余地が広がるとか、そういう最前線の状況はなかなか東京のオフィスビル街で思いつけるものではないはずだ。現地とのつながりをつくる必要がある。インターネットのインフラが整うにつれて、現地の人々と先進国の生産者が意見交換しあってより現地に適合した製品を創り出していく、そういう取り組みができるようになるかもしれない。

アプローチはどうあれ、現地で活動するNGOとか地元の人たちとの協働関係をいかに創り出すかが、これから海外市場、途上国市場により積極的に出ていかざるをえない日本企業にとって、事業の明暗を分ける重要な課題になるのかもしれない。

そしてそういう事例が案外、国内でこれまで見過ごされてきた問題に官・民・NPO挙げて取り組む上で良いヒントになったりするのかもしれない。P&GユニリーバなどBOP市場で成功している企業のケーススタディには、新規ビジネスのヒントも、社会イノベーションのヒントも豊富にあるはずだ。いわゆる「社会起業」の観念にとらわれず、「社会問題の解決」に着眼していかなければ。出版でも何かできないものだろうか。。