フランク・ロイド・ライト

先日発売となったビル・ストリックランド著『あなたには夢がある』にも盛んに話題にのぼる建築家、フランク・ロイド・ライト。この本の編集を始めたころから気になって仕方がないので写真集を見たり評伝を読んだりしていますが、この本。

『未完の建築家 フランク・ロイド・ライト
未完の建築家 フランク・��イド・ライト

ライトの生涯を描いたすばらしくおもしろい読み物です。

ライトの代表作「落水荘(フォーリングウォーター)」のとんでもなく独創的な構造に感激して今その写真がPCの壁紙になっていますが、滝の上に家を建ててしまう、クライアントの意見に逆らってでも自分の建築思想を貫こうとするライトの生きざま、すさまじいです。

一方で、私生活はほとんど破綻、年齢詐称にはじまる虚偽の数々、借金まみれ、おそろしく身勝手、天才を自称してはばからぬ傲岸不遜、批判されれば「世界に立ち向かう建築」の美学をふりかざして居直る、等々、人間としておもしろすぎます。

クライアントの意向を半ば無視した建築について、建築家のエゴを批判されても仕方ありませんが、それは無論、いわゆる美しさやかっこよさのレベルにとどまらず、住宅なら「住む」ということそのもの、オフィスなら組織のあり方や仕事のスタイル、等々に対するライトなりの考え抜かれた思想に貫かれたもの、だったらしい。

とんでもない奴だ、と思うと同時に、感銘を受け、かつ爽快な気分にもなる良い評伝です。いつかライトの建築を実際に見てみたい。