Carne Ross (Independent Diplomat)

編集の仕事をしていて良いことはいろいろあるが、ひとつは、いろんな人に比較的自由にコンタクトをとりやすいこと。こちらの話の筋がとおってさえいれば、結構な大人物にも、とりあえず取材の依頼ぐらいはできる。これは、ありがたいことだ。それに私は、いろいろと良い出会いに恵まれている。これは小学校時代から一貫していて、生まれつきの運ともいえる。スピリチュアルっぽいからあまりそういうことは言わないが。


ともかく、そうやって私が連絡をとっているなかに、カーン・ロスという人物がいる。元・イギリス外務省のエリート外交官で、イラク戦争に反対して外務省をやめ、「独立外交官(Independent Diplomat)」という組織を立ち上げて、国際社会で弱い立場にある小国や地域の外交施策の支援などを行っている。

つまり、小さな国のための外交アドバイザー。とんでもない仕事をする人がいるものだ。国際政治の現実を知り尽くした人だけが行える、他に類を見ない仕事。カーンにしかできない仕事。彼はコソボの独立にも大きく貢献した。

小国といっても、非人道的なことを行う勢力を支援することはない。平和と民主主義を志向している、しかし国際社会で苦労している国や地域を支援しているのだ。・・・というと期待した人がいるかもしれないが、もちろん、日本に対してサービスする気はなさそうだ。日本は自力でがんばって当然だから。もちろん私も、そんな要望をしているわけではない。

私が要望したのは、彼の著書を日本で翻訳出版させてほしいということだ。快く受け入れてくれた。さっき、今考えている販売計画についてメールを送ったら、喜んでくれた。日本語版の内容についても相談をしている。


先日、友人との話のなかで「プロデューサー」の仕事について考えさせられた。いわゆる編集者の役割を英治出版ではプロデューサーと表現している。それは、伴走者、ということだと友人は指摘した。そうだと思った。著者とFace to faceで相対して何か要求したりされたりする関係というより、Side by side で著者と目標を共有して並走していく関係だと。そうあらねばならない。ただ著者にコンテンツをつくってもらって、出させてもらう、というビジネスをしたいとは思わない。ともに創る。この意味では、伴走というより、伴奏かもしれない。

そして、そのためには、自分が支持・共鳴・共感する人々をよく理解し、理解するだけでなくその目標を共有し、その実現のために自分にできる行動を幅広く、きちんと考えて実行していく、そういう姿勢が求められる。そうすることが、ときどき、少し彼らの役に立つ、こともある。そういう仕事だ。彼らの役に立てば、世の中のためにもなる。そういう人を選ぶ。

そう相手は誰でも良いわけではない。相手をしっかり選ぼう。そして、応援したい人はしっかり応援しよう。そして幸いにも私には、応援したい人がたくさんいる。そういう人に、不思議といろいろ巡り合う。そしてそういう幸運に恵まれているからには、彼らを真の意味で応援していくことは、たぶん責任なんだろうと思う。それを怠るとたぶん、そういう人に巡り合うこともなくなるのだ。


カーンの夢も共有したい。世界平和だ。大きい。大きいけど共有できると思ったから彼の本を出すわけだ。カーンは言う。「すべての国の利益を考えるのが本物の外交だ」。そのために自分にできることは? 外交や世界情勢についてもっと勉強しないといけない。ソーシャルアントレプレナーやソーシャルファイナンスについてももっと勉強しないといけないし、教育問題についても、農業についても、ケネディスクールも、貧困問題も、MOTも、まちづくりも、いろいろ、調べたり学んだり想像したりしないといけないことがある。怠けるな自分。ちゃんとやれ。

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