未来をつくる資本主義

スチュアート・ハートの『未来をつくる資本主義』(原題Capitalism at the Crossroad)が、今日の日本経済新聞の書評欄「この一冊」で大きく紹介されました。

未来をつくる資本主義 世界の難問をビジネスは解決できるか [DIPシリーズ]

紹介してくださったのは神戸大学の岡部克彦教授です。

アジア、アフリカ、南米などの貧困層は、社会及び環境問題の巣窟であるとともに、ビジネスニーズの宝庫でもある。これらの人々のニーズに合った事業を現地と密着した形で進めるなら、社会や環境を安定させ地球規模の持続可能性を回復するだけでなく、大きなビジネス上のチャンスを得ることにつながると著者は指摘する。つまり、ピラミッドの底辺を目指した戦略は、ピラミッドの頂点近くで頭打ち状態のグローバル企業に、技術とマネジメント体制の創造的破壊をもたらし、大きな成長の機会を提供することになるのである。

貧困層=ピラミッドの底辺(BOP; Bottom of the Pyramid)に潜む巨大なビジネスチャンスを紹介した本としてはハートの盟友でもあるC.K.プラハラードの『ネクスト・マーケット』(The Fortune at the Bottom of the Pyramid)が既によく知られていますが、本書でハートは「持続可能性」をキーワードに環境問題を含む世界規模の難問を広く射程に入れて、BOP市場におけるビジネスの可能性を詳解しています。アル・ゴアが序文を寄せているほか、数多くの識者が推薦しています。

この本が、企業が企業自身の長期存続のためにその思考プロセスを変え、将来のビジネスを取り巻く現実に適応する努力を始めるきっかけになることを願っている。ビジネスリーダーだけでなく、資本主義の問題を解決しようとする読者にヒントを与える本である。――ムハマド・ユヌス

この『未来をつくる資本主義』の主張は、岡部教授も指摘しているように、日本企業にとっても非常に示唆深いものだと思います。成熟しきった市場で競争を続け、ガラパゴス現象とかパラダイス鎖国とか評されてもいる日本。海外でますます広がりつつある巨大市場は極めて大きな意味を持つはずです。