血と骨

この週末にツタヤでDVDを借りてきて観ました。私は北野武監督の映画が大好きですが、本作は崔洋一氏が監督、主演がビートたけし。役にぴったりの迫力ある演技です。

血と骨 通常版 [DVD]

主人公は戦前に祖国朝鮮から日本に渡ってきた金俊平という人物。原作者・梁石日氏の実父がモデルだそうで、金俊平の息子が物語の語り手。金俊平は、戦後の朝鮮人街で蒲鉾工場を始め、金貸しで荒稼ぎし、家族を顧みないどころか日常的に暴力を振るう傍若無人な、まあ、とんでもない人です。その怒りに満ちた孤独で壮絶な生き様を描く。背景となる戦後の在日朝鮮人社会や、共産主義運動や例の「地上の楽園」の話などが織り合わされ、一つの昭和史ともなっています。

ツタヤの分類シールではなぜか「人情 喜劇」となっていましたが、悲劇的な話であり、でもただ悲惨な話というのではなく、この怪物と言われた人間の言語道断な生き方に、物語が進むにつれて不思議な魅力や親しみを感じるようになります。それは「理解し合う」ことなど望まない父親に対する、望まず理解し合わないままの理解が、本作を撮る視点に込められているからでしょう。

そういえば、主人公とレベルは雲泥の差がありますが田舎の我が父も、かつては恐ろしい存在でよく殴られた。椅子を投げつけられたりしたもんだ。と思い出したりして映画の視点に妙な感慨を覚えもしました。年末年始は帰郷します。父の還暦祝いをする。老人扱いするなと怒られる気がしますが。